便利なVPSをずっと無料で使い続けられるのであれば、この上なくありがたいものです。
ただし無料で使えるからにはサーバー以外の部分で料金がかかるのではないか?利用できる機能は相当制限されてしまうのではないか?とさまざま憶測してしまうのも事実です。
今回はずっと無料で提供されているVPSはどれだけ使えるのかを紹介していきたいと思います。
無料VPSは本当に存在するの?
日本国内のレンタルサーバーであれば、検索するといくつか無料で利用できるサービスを見つけることができます。機能や容量が限られていて、どちらかというと有料のサービス利用へ誘導するようなサーバーが目立ちますが、ある程度無料のままで運用できるものもあります。
同じように無料で使える「VPS」を検索をしても、国内ではなかなか見つかりません。大抵は期間限定のお試しであったり、有料申し込みした場合に一部期間が無料となるものです。
無料で使えるのであれば海外のサーバーでも良いと思われる方もいるかもしれません。しかし海外でもまともに無料で使えるVPSはなかなか見つからないですし、正直怪しいサービスが多いです。言葉の問題も出てきやすいのでたとえそれらしいサービスを見つけたとしてもおすすめはできません。
したがって今回は、ある程度無料のままでも利用ができて、安心して利用できる国内提供の無料VPSを紹介します。
なお、国内外のさまざまな無料VPSは以下の記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。
誰もが知る企業の提供する安心な無料VPS「GCP」
ある条件下の範囲であれば無料で利用できるというVPSサービスが「GCP」です。この「GCP」はGoogleが提供するサービスで「Google Cloud Platform」の略です。名の知れた企業の提供するサービスなので信用面は折り紙付きです。
公式ページにも記載されていますが利用顧客も「Asahi」「Paypal」「Twitter」「FedEx」と誰もが知る企業が並べられていて、利用実績も抜群です。
無料で使う際の注意点
無料のサービスには「Always Free」と呼ばれるものと、300ドルのクレジットが付いた無料トライアルの2つがあります。
無料トライアルは他社のVPSサービスにもあるようなトライアル期間であり、3ヶ月経過後に有料登録となるサービスです。
トライアルはすでにGCPを有料利用したことがあったり、トライアルの利用をしたことがある場合は利用ができません。また申し込みをする過程でクレジットカードか銀行口座情報の入力が必要となります。
今回焦点を当てる「Always Free」はトライアルと別で、正真正銘 Google Cloudアカウントを作成した際に無料で利用できるサービスの部分についてです。お間違いないようご注意ください。
「Always Free」で使用できる機能
- App Engine
一言で表すとアプリケーションの開発環境です。Pythonのほか、JavaやGoといったプログラムも利用できる環境です。「スタンダード環境」と「フレキシブル環境」がありますが無料の場合は「スタンダード環境」のみ利用可能です。 - AutoML Natural Language/AutoML Tables/AutoML Translation など
いわゆるAIサービスが構築できるサービスです。ラベル付きのデータから機械学習をさせることができます。1ヶ月あたり5000ユニットの予測ができます。 - BigQuery
サーバーレスな膨大な量のデータを格納できるデータウェアハウスです。ほぼリアルタイムにてビッグデータの分析が行えます。1ヶ月あたり1TBのクエリ、10GBのストレージ利用が可能です。 - Cloud Build
作成したプログラムのソースを自動でテストやビルドしてくれるサービスです。1日あたり120ビルド。 - Google Cloud オペレーション スイート
Cloud Logging とCloud Monitoringでアプリケーションのパフォーマンス具合をモニタリングし、トラブルシューティングを行いながらパフォーマンスを向上させていきます。 - Cloud Functions/Cloud Run
サーバーレスでコンテナが実行できます。1ヶ月あたり200万回のリクエストが可能。 - Cloud Shell
GCPにおけるシェル環境です。 - Cloud Source Repositories
多機能にプライベートなGitリポジトリを作成しておけるサービスです。5ユーザー、50GBのストレージ、50GB(下り)が利用可能です。 - Cloud Storage
大容量のデータを保存、取得できます。米国リージョンのみ5GB/月。1ヶ月あたり、北米から全リージョンへの下りネットワーク1GB(中国とオーストラリアを除く)。 - Compute Engine
仮想マシンの利用が可能なサービスで、大規模なクラスタ構成を構築することもできます。高速で安定したパフォーマンスを期待できます。特定のスペックのインスタンス範囲であれば無料で利用が可能。
30GBのHDD、5GBのスナップショットストレージ、1ヶ月あたり、北米から全リージョンへの下りネットワーク1GB(中国とオーストラリアを除く)の環境となります。
インスタンスの上限はインスタンス数ではなく時間です。時間数を使い切るまで該当インスタンスの毎月の使用量は無料となります。外部IPアドレスも利用できます。 - Firestore
GCPの開発に対応したNoSQLドキュメントデータベースです。1GBのストレージ、1日あたり50000回の読み取りオペレーション、20000回の書込み/削除オペレーションが可能。
他にも利用できる細かい機能は多数ありますが、無料で利用できるメインの機能は以上となります。
実際に無料の「GCP」に登録してみた所感
登録にはGoogleアカウントを利用しました。「Always Free」だけを利用する場合でも3ヶ月の無料トライアルの300ドル分が自動でついてきます。クレジットカード情報の入力は必要ですが、手動更新しない限り課金がされない旨の注意書きが書いてあって安心できます。
登録が完了すると以下のような画面が表示されます。
左メニューに利用できるサービス名がずらりと並んでいます。
「サポート」を見てみるとサポート形態がとても充実しています。ただしテクニカルなサポートを受けたい場合は有料プランへのアップグレードが必要になります。有料プランを利用する時はありがたいです。
利用できるAPIのライブラリが一覧で確認でき、簡単に「有効」にすることができます。
試しに「Compute Engine」でインスタンスを作成してみましょう。
希望のスペックを選択していきます。
ブートディスクではWindows OSも利用できるようになっているほか、カスタムイメージや取得しておいたスナップショットも選択できるようになっています。
サイト内の説明に従って無料で利用できるスペックを選択していきます。
するとここで画面右側に料金に関する説明が表示されます。
無料の対象となる条件は以下となりますが、それ以外の選択を行ってしまうと「今月のf1-microインスタンス使用量は、最初の720時間分が無料です。」の表示が出ません。
1. 以下、いずれかのリージョンを選択
・オレゴン: us-west1
・アイオワ: us-central1
・サウスカロライナ: us-east1
2.「マシンタイプ」は「f1-micro」を選択
十分に選択項目を確認のうえで「作成」を行ってください。
作成が完了すると、以下のように外部IPアドレスを含んだインスタンスの情報が表示されます。
作成した名前部分をクリックするとさらに詳細が確認できます。
なお「接続」でSSHの「ブラウザウィンドウで開く」を選択すると、しばらくしてブラウザ上でSSH接続が確立し、サーバーをコマンド操作できるようになります。面倒なクライアントソフトのインストールなどが不要です。
またインスタンスを削除したい場合は右側の縦表示の「…」から「削除」を選択するだけです。
今回は提供されているGCPの管理画面上からの初期操作を行ってみました。
まず言いたいのはとにかく画面の作りがシンプルで、操作性に優れていると言うことです。
また登録する前に、無料で利用できる機能について詳しい説明も書かれているため、知らないうちに料金が取られていたということも起きにくいユーザー目線のサービスでした。
1年間無料で利用できる「Microsoft Azure」
「Microsoft Azure」は永続無料のサービスではありませんが、12ヶ月間無料で利用できるサービスになっています。
なおVPSのような仮想マシンは12ヶ月間の期間限定で無料ですが、以下サービスはずっと無料で利用できます。
- Azure Cosmos DB
オープンAPIを利用してNoSQLを利用できます。 - App Service
Node.jsやPHPなどでプラットフォームに依存しないアプリの作成が可能です。 - DevTest Labs
高速で簡単な開発やテスト環境を構築できます。 - Azure DevOps
MicrosoftのDevOpsを利用した様々な言語でのアプリ開発が可能な機能です。 - Security Center
セキュリティ上の脅威検知、回避、対応ができる機能です。 - 仮想ネットワーク
プライベートネットワークを利用してオンプレミスのデータセンターに接続することができます。 - Visual Studio Code
オリジナルなコードエディターをクラウド開発用に利用できます。 - SQL Server 2017 Developer Edition
アプリケーションの構築や、テスト、テスト運用が可能です。
利用できる機能を見ていくと、「Microsoft Azure」は「GCP」のMicrosoft版と言えるかもしれません。
まとめ
今回はVPSの無料利用、サービスの信頼という観点からGoogleの「GCP」をメインに紹介してきました。
無料であっても、有料プランと変わらないのではないかと思われる操作性に驚きました。またサービス内容もとても明解です。開発内容にもよりますが、スペックに関してもテスト利用には十分と思われます。
また永続無料ではないですが、同等のサービス内容で1年間無料サービスがあるのは「Microsoft Azure」です。
残念ながら今のところ海外の無料VPSにはおすすめできるようなものがありませんでした。今後見つけた時はまた別に紹介させていただきたいと思います。
選択肢はあまりないですが、試しにVPSを利用してみたい、テスト用に利用したいと思っている方はぜひ無料VPSの利用も検討してみてはいかがでしょうか。
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